東京弁は感染るんです
更新をサボリ続けている「ワンポイント関西弁」にセーチャンさんから救いの手がありました。
『さて、いい関西弁、思いつきましたよ!ていうか、今まで誰も言い出してないのが不思議かも?! そう、「おおきに」です。このニュアンスは、関東弁にはないはず。ぜひラインアップにお加えください。』 ということで、今回は「おおきに」です。 辞書には 『おおき‐に【大きに】 おおきに(おほき‥) T 〔副〕(もと形容動詞「おおき(なり)」の連用形。連体詞「おおきな」が成立した室町時代以後の用例を、副詞と認める) 1 はなはだ。たいそう。大いに。*浮・傾城禁短気‐五「よねの衣紋も昔とは大きに替りぬ」 2 おおように。寛大に。*浮・好色一代女‐四「面(おもて)の奥の大きに出られて」 3 (相手の言葉に相づちを打つときに用いる)なるほど。まったく。「大きにそうだ」 U 〔感動〕(「大きにおかたじけ」「大きにありがとう」などの略か)どうもありがとう。関西でいう。 国語大辞典(新装版)小学館 1988』と載っています。 ここで取り上げる「おおきに」はもちろん辞書の2番目の意味です。 「大阪ことば事典」には 『オォキニ【大きに】(副) なるほど。まったく。大きにその通り・大きにそうやなどの略。実際その通りというような場合に用いる。また、大きに大きに、と重ねていう。』 『オォケニ・オォケニ【大けに】(副) 大いに。大変。大きにの行訛。(オォカメの項参照) [例] オォケニはばかりさん(どうもありがとう・どうも御苦労さま。感謝の意。これを略して、大けに、ですますことが多い)。「大けに」の次に言葉を付ける場合には「大け、はばかりさん」とニを省略することがあるが、単に「大けに」の場合には決して略さず、反対にニに力を込めていう。そして、それが最小の感謝から最大の感謝にまで通じるところに大阪ことばのふしぎなおもしろさがある。また、これでサンキュー・ノーサンキューの両方にも微妙に使いわける。』 と書いてあります。 国語辞典には「おおきに=ありがとう」と書いてあるのに対して、「大阪ことば事典」には「おおきに=ありがとう」とは書かれていません。 「おおきに」が「ありがとう」なのではなく、「はばかりさん」が「ありがとう」だったのです。 ただし、現在では「ありがとう」の意味で「はばかりさん」と言う人は多分ぼぼ絶滅状態ではないかと思います。
久しぶりに帰省して、すっかり忘れていた言葉を母から聞きました。
「そんなおよそなことしとったらあかんで」 辞書には 『T (「おおよそ」の変化) 1 おおまかなところ。だいたいのところ。あらまし。ほぼ。ほとんど。 「およその話(見当)」「長さおよそ三センチ」 *平家‐一一「凡(をよそ)は九国の惣追捕使(そうづゐぶし)にもなされ」 2 (形動)いいかげんであるさま。おろそかであるさま。ぞんざい。 *虎明本狂言・二千石「いひや、かやうに大事のうたひを、およそにしてはかなふまじひ」 3 (形動)知能が不完全であること。あほう。痴呆(ちほう)。 *伎・一心二河白道‐一「殿様はおよそな程に、そちが娘と思うて守り育て」 国語大辞典(新装版)小学館 1988』と載っています。 「そんなおよそなことしとったらあかんで」は辞書の2番目の意味で、「そんないいかげんなこをしていたらだめだよ」ということです。 「大阪ことば事典」にも『おおよそ[大凡]の約。ぞんざい。万事に不注意なことの意に用いる。[例] オヨソやさかい、そんなしくじりするのやがな。』と載っているので、関西弁であることには間違いないと思います。 私にとっては子どもの頃から頻繁に言われ続けてきた言葉ですが、なぜか私自身は「およそ」という言葉は使いませんでした。 同年代の友達は使わない類の言葉だったので、私が子どもの頃にはすでに絶滅しかかっていた言葉だったのかも知れません。
1年以上も更新をサボっている「ワンポイント関西弁」にセーチャンさんからヒントをいただきました。
今回は「しばく」です。 辞書には 『鞭(むち)や細い棒などで強くたたく。細い棒やひもなどを強くうち振る。*浮・世間旦那気質‐二「烟管を三度しばきけるが」 国語大辞典(新装版)小学館 1988』 と載っています。 標準語で「しばく」とは鞭などでたたくことですが、関西弁で「しばいたろか」といえば「なぐるぞ」の意味です。 別に鞭など持ってこなくてもかまいません。素手で十分です。 「茶(ちゃー)しばく」(喫茶店に行く) という言葉が一時(学生の間などで)流行ったようですが、私は生で聞いたことはありません。 四半世紀ほど前に私は大阪の大学に通っていましたが、当時も「茶(ちゃー)しばく」という言葉は聞いたことがないので、この言葉は比較的新しい流行語のようです。 今も使われている言葉なのかどうか、私は知りません。 「しばく」のは「茶」だけで、「うどん」や「ラーメン」はしばかないのか、お好み焼きやたこ焼きはしばかないのか、いずれも不明です。 牛丼を食べに行くことを「牛しばく」と言うとか言わないとか聞いたことがありますが、まぁ、善良な市民は、お茶もうどんも牛も、もちろん人間も、しばいたりしないほうが良いと思います。
これも掲示板でセーチャンさんからリクエストいただいた言葉です。
「はねる」が関西弁? 当然辞書には 「勢いよく上げる、だとか、刀で切り落とす、はじきとばす・・・」とか書いてありますが、もちろんこれらは関西の言葉ではありません。 「大阪ことば事典」(講談社学術文庫)を見ると、載っていました。 『ハネル[撥ねる] (1)撥ねてとる。[例]上米ハネル。 (2)芝居が終わる。劇場が打ち出す。芝居小屋のむしろ戸を上へはねあげて客を出したことから出た語。』 「上米ハネル」も載っていて、 『ウワマイハネル[上米刎ねる] 売買・譲与などの世話をしていて、無断で口銭を取り、或いは品物の一部分を抜き取るなどのことをいう、上前ではない』 と書いてあります。 わざわざ 「上前」 ではないと書かれていますが、「国語大辞典(新装版)小学館 1988」には 「はねる」のところに『人の取り分の一部分をかすめ取る。「上前をはねる」』 と書いてありました。 まぁ、どちらでも大勢に影響はありませんが。 それより、この言葉は東京でも通じないことはないと思いますが、本当に関西の言葉なのでしょうか。 「ワンポイント関西弁」と言いながら、私にはわかりません。
掲示板でセーチャンさんからリクエストをいたいた言葉です。
この言葉が伝わらなくて難儀 (なんぎ。この言葉も関西ではよく使われます。困ったとかわずらわしいと言う意味) されたそうです。 辞書には 『ほかす 〔他サ四〕(「ほうか(放下)す」の変化か)ほうりすてる。なげすてる。*談・当風辻談義‐二「大体の用なら放下(ホカ)して」 国語大辞典(新装版)小学館 1988』 と載っています。 辞書には載っていますが、東京では通じにくいのではないでしょうか。 東京弁(標準語ではなく純粋な東京弁、江戸弁)では「うっちゃる」と言うのではなかったかと思います。 【例】 「それ、もういらんからほかしといて。」(それ、もういらないから捨てといて) 小学校の国語の教科書に方言の話題として 東京から大阪に来た人が、大阪人の先輩に「それ、もういらんからほかしといて。」と言われて「ほかす」の意味がわからず「保管」することだろうと思って保管しておいたら、なぜ捨てないのと怒られた、という話が載っていたことを思い出しました。 ということは、やはり東京では通じにくい言葉かも知れません。
辞書には
『(「ま(間)」の変化。一説に「間(ま)」と「運(うん)」とが結びついたものとも) はずみ。まわり合わせ。めぐり合わせ。しあわせ。運。*浮・新色五巻書‐一「まんよくば勝軍の場」 国語大辞典(新装版)小学館 1988』 と載っています。 辞書には載っていますが、東京ではあまり使われません。 近畿地方のほか中国、四国、九州や岐阜、新潟で使われているそうです。 【例】 「マンが悪いなぁ。」(運が悪いなぁ) 「マンよう電車の間におぉたわ」(都合よく電車に間に合った) 1990年(平成2年)に発表された伊丹十三監督・脚本による映画「あげまん」の「まん」も、本来は「間」の意味で、「あげまん」とはすべての「間」が上手くいく、タイミングがすべて良くなる事、という意味なのだそうです。 それが、東京弁でいうところの女性性器と混同され、男を幸運に導く女性=「あげまん」、というような使い方をされるようになったと言われています。
辞書には
『1 (形動)努力をして困難に立ち向かうこと。熱心に物事を行なうこと。 2 気がすすまないことを、しかたなしにすること。*随・甲子夜話‐一一「勉強して櫓を揺しゐたれば不覚睡りたり」 3 将来のために学問や技術などを学ぶこと。学校の各教科や、珠算・習字などの実用的な知識・技術を習い覚えること。学習。また、社会生活や仕事などで修行や経験を積むこと。 4 商品を安く売ること。商品を値引きして売ること。「せいぜい勉強いたしておきます」 国語大辞典(新装版)小学館 1988』 と載っています。 「勉強しまっせ、引越しのサカイ、ほんまかいな、そうかいな」というCMでお馴染みの『勉強』です。 辞書の解説4番目にある、値引きをする、という意味ですが、この言葉も大阪ことば事典(牧村史陽編 講談社学術文庫)に載っていますので、関西で主に使われる言葉に間違いないと思います。 【例】 「1割ほど勉強させてもらいます。」 「勉強」の語源は中国語で「無理をすること」という意味なのだそうです。 勉強が「学習」の意味で使われるようになったのは明治以降のことだそうで、それまでは商人が無理をして値引きするという意味で主に使われていたそうです。 ということは、関西で使われている「勉強しまっせ」は、勉強の本来の意味というか、古い形が今も残されていると言えそうです。
辞書には
『〔形口〕卆とろ・し〔形ク〕 1 動作や反応がのろい。間が抜けている。にぶい。*松翁道話‐四・下「鳩から見ては、人はよっぽど、とろいものぢゃ」 2 火などの勢いや力が弱い。*俳・北国曲‐四「とろひ行灯に塩を振かけ」 国語大辞典(新装版)小学館 1988』 と載っています。 「とろい」は共通語かと思ったのですが、大阪ことば事典(牧村史陽編 講談社学術文庫)に 『のろい。にぶい。またトロコイ。トロクサイ。 「全国方言辞典」に「尾張(尾張方言)・福島・静岡・愛知・長野県下伊奈郡・岐阜・富山・滋賀・三重・京都・大阪・淡路島・岡山県小田郡・広島・石見・山口・四国・大分・熊本』 と書いてあるので、純粋な関西弁とは言えないかもしれませんが、主に関西方面で使われる言葉ではあるようです。 【例】 「トロイやっちゃなぁ。見てるとイライラする。」 ウサギとカメの物語にもあるように、なんでも早ければいいと言うものではありません。 トロイように見える人でも、実は非常に思慮深い人なのかも知れません。 だいたい関西人はイラチ(せっかち)な人が多すぎます。 (私も人一倍イラチなほうなので、人のことは言えませんが)
辞書には載っていませんでした。少しもという意味です。
共通語の「ひとつも」に近い言葉だと思います。 『ひとつも 〔副〕少しも。ちっとも。*浮・日本永代蔵‐二「ひとつも埒(らち)のあかぬ男」 国語大辞典(新装版)小学館 1988』 【例】 「いっこもあれへんやん。」 この例だと「いっこ」もあれへん=「一個」もない、のようにも思われますが、「いっこも」の「こ」は特に個数を表わしているのではありません。 【例】 「いっこも言うこと聞けへんやっちゃなぁ」 「いっこもわかってへんなぁ」 この例だと、「いっこも」の「こ」は個数を表わしていないということがよくわかると思います。
辞書には
『いけず (「行かず」の変化したものか) 1 (形動)意地の悪いこと。たちのわるいこと。また、その人。いかず。 2 悪人。ならず者。 3 好ましくないこと。不良じみたいたずら。 4 贋金(にせがね)など通用しない貨幣。 国語大辞典(新装版)小学館 1988』 と載っています。 ならず者や偽金まで「いけず」というとは知りませんでした。 関西で「いけず」というと意地悪のことです。 【例】 「あの子は、ほんまイケズやなぁ。」 大阪ことば事典(牧村史陽編 講談社学術文庫)に「いけず」の語源として『オールド・ミスなどの小姑根性のひねくれた気質が人に嫌われて、あれでは嫁にも行けない。行けず者だ、が行けずだといったものではないだろうか。』と書いてありましたが、だいたい「いけず」をするのは女性と相場は決まっています。 よく似たことばに根性悪(コンジョワル)があります。 どういうわけは、「悪」をつけずに「あの子コンジョや」といっても、根性が悪い、意地悪だ、という意味になります。
「あほ」は「阿呆」の「あほ」です。
「ほど」はおおよその範囲や程度を表す「ほど」です。 「あほほど」いうと非常にたくさんという意味です。 辞書には 『あほう(‥ハウ) T (形動)知能が劣っているさま。また、そのような人、行動。おろか。たわけ。ばか。あほ。*虎明本狂言・鈍太郎「いよいよあほうじゃ」 U 〔副〕(「に」を伴うこともある)無上に。むやみに。大変に。 国語大辞典(新装版)小学館 1988』 と載っていますが、この2番目の意味に近い使い方だと思います。 【例】 「使いもせんのに、そんなあほほど持ってきてどないすんねん。」 非常に長いことを「あほの命ほど長い」ということもあります。 普通に長いとか多いとか言えばいいものに「あほ」という言葉を付けるのは、多分関西人が「あほ」という言葉に愛着を持っているからだと思います。 「あほ」を辞書で引いたとき、次のような諺が載っていました。 「阿保の鼻毛で蜻蛉(とんぼ)をつなぐ」 ばかが鼻毛を長くのばしていることのたとえだそうですが、こんな諺は初めて知りました。
「どうにもならない」ということです。
『どうにも 〔副〕(副詞「どう」に助詞「に」「も」が付いてできたもの) 1 手段をつくしても、ある行為や状態が成り立ちにくいという気持を示すことば。打消表現を伴って用いる。「どうにもならない」 国語大辞典(新装版)小学館 1988』 ドウモナラヌ→ドモナラン→ドムナラン→ドンナラン と変化したそうですが、「どんならん」には「いけない」とか「だめだ」という意味合いがあります。 【例】 「そんなことしたらどんならんなぁ。」 そんなことをしてはいけない、という意味です。 雨降りの太鼓で、ドンナラン。というシャレがあります。 (雨降りの日には太鼓の皮がゆるんでドンとならない) シャレの説明せなあかんとは、どんならんなぁ。。。
タイトルだけ見て気を悪くしないでくださいね。
あなたのことを言っているのではありませんから。 関西ではカワハギのことを「はげ」と言うのです。 『【カワハギ】 カワハギ科の海魚。全長約三〇センチメートルに達する。からだは側扁し、菱形に近い。口は小さくとがり、目の上方に第一背びれである一本のとげがあり、腹びれはない。体色は種々で皮膚は厚く表面は粗雑。本州中部以南から東シナ海にかけて分布し、磯にすむ。夏、最も美味とされる。皮をむかないと料理できないところからこの名がある。はぎ。うまづら。 国語大辞典(新装版)小学館 1988』 ハゲ頭の「はげ」もカワハギの「はげ」もまったく同じように発音 (「はげ^ぇ」(●^を高く発音し、音節内に「さがりめ」(拍内下降)がある) しますので、ハゲ頭の人の前ではこの魚の話題は避けたほうがいいかもしれません。 【例】 「はげの煮付けは美味いぞ。」 カワハギは英語では「filefish」といいます。 ファイルといってもファイルに綴じるファイルではなくて、やすりのことだそうです。
辞書には
『【香香】 こうこう(カウカウ) (「香(こう)の物」の「香」を重ねたもので、もと女房詞)生の野菜を、糠味噌や塩につけた食品。古くは味噌漬をいい、また、沢庵漬をいう場合もある。つけもの。こうこ。 国語大辞典(新装版)小学館 1988』 と載っています。 関西で「こぉこ」(アクセントは「ぉ」) または「おこぉこ」(こぉこに「お」をつけると、最初の「こ」にアクセントが来る) というと、漬物一般を指すのではなく、沢庵漬けに限定されるようです。 東京人(私の妻も)は「こぉこ」のことを「おしんこ」というようですが、私は「おしんこ」というと何か別の食べ物のように感じてしまいます。 【例】 「このおこぉこ、おいしいね。」 ネットで面白いサイトを見つけました。 『お香々考』 漬物の呼び方についての地域差が書かれています。
「ずっこい」。辞書には載っていませんでしたが、「すこい」なら載っています。
『〔形口〕(「こすい」の「こ」と「す」を逆にした語)ずるい。悪がしこい。*浮・笑談医者気質‐一「さりとは京の人はせちがしこう、すこひ者じゃ」 国語大辞典(新装版)小学館 1988』 例えば、鉄棒とかぶらんこの順番待ちをしているときに横から入ってくる子、ずっこいですね。 「ずっこい」は「すこい」をさらに強めた言い方です。 私が小学生だった頃にはよく使っていましたが、中学生になった頃にはもう使わなくなってしまいました。 幼児語というわけでもなさそうですが、私は大人が使っているを聞いたことがありません。 【例】 「ずっこいことするなよ。」 要するに、ずるをすると言うことですが、「ずるをする」と「ずっこいことをする」では「ずっこい」ほうが、誤魔化し度というか悪がしこさというか、狡猾さがより高いような気がします。
「どつぼ」。辞書には載っていませんでしたが、「のつぼ」なら載っています。
『野原など屋外に置いて、糞尿(ふんにょう)を溜(た)めておく壺。肥壺(こえつぼ)。 国語大辞典(新装版)小学館 1988』 若い人には(もちろん私も若いですが)、なぜ屋外に糞尿を溜めておく壺を置く必要があるのか、説明が必要かも知れません。 昔は、肥料にするために糞尿を溜めていたのです。完全有機肥料です。 「どつぼ」とはこの肥壷のことですが、ぬきさしならぬ決定的な打撃を受けた状態のことも「どつぼ」と言います。 【例】 「えらいめぇにおぉたわぁ。ほんまどつぼやでぇ。」 「どつぼにはまった」ということもあります。 どつぼにはまる。考えただけでも恐ろしい情景です。
生節。東京で言う『なまり節』のことです。
辞書には 『鰹節のまだ乾ききっていないもの。 国語大辞典(新装版)小学館 1988』 と載っています。 なまり節を見ると 『節取りした鰹(かつお)を蒸した食品。鰹節の乾燥前のもの。なまり。《季・夏》 国語大辞典(新装版)小学館 1988』 と書いてあって、一見違うものかと思ってしまいますが、同じものです。 【例】 「晩ご飯のおかずは、生節がええ。」 江戸時代の有名な川柳集「誹風柳多留」に、『生節をなまり節とは江戸なまり』というのがあるそうです。 昔は晩ご飯のおかずによくこの生節がでてきて、私はどちらかというと嫌いなほうだったのですが、ここ20年ぐらい食べていないので、たまには食べてもいいかという気がしないでもありません。
辞書には
『かしわ(かしは) (羽の毛が柏の葉の色に似ているからいうとも)羽毛が茶褐色の鶏。和鶏。また、その肉。特に雌鶏の肉を美味としたが、天保以降は鶏肉の総称となった。かしわどり。 国語大辞典(新装版)小学館 1988』 と載っています。 かしわといっても柏餅のことではありません。関西では鶏肉のことを「かしわ」と言います。 【例】 「このかしわ、500グラムちょーだい。」 辞書によれば、羽毛が茶褐色の鶏のことを言うらしいので、白色レグホンのブロイラーを「かしわ」と言うのは間違いなのかも知れません。 しかし、関西では名古屋コーチンも白色レグホンもプリマスロックも鶏肉は「かしわ」です。 1個何百円もする玉子を生む烏骨鶏(ウコッケイ)の肉は黒っぽいらしいです。この烏骨鶏の肉を「かしわ」と言うかどうか私は知りませんが、いかにも高級そうなのでこの場合に限り「かしわ」ではなくて「烏骨鶏の肉」と言うのではないでしょうか。
ワンポイント関西弁に「まむし」とあると当然蛇のマムシではなくて、鰻飯の「まむし」だと思われるでしょうが、今回の「まむし」は蝮指の「まむし」です。
「まむし」が関西の言葉なのかどうか、私にはわかりませんが、「大阪ことば事典」(牧村史陽編 講談社学術文庫)に『マムシ【蝮】(名) 手の指をのばして第一関節だけ曲げることのできる指の称。』と載っているので、多分関西で主に使われる言葉だと思います。 【例】 例文は思い浮かびません。 かわりに、まむしの写真を載せておきます。 広辞林 第5版(三省堂)には 「まむし指 マムシの鎌首のように、手の指の末節が曲がるもの」 と書かれています。 ひょっとすると「まむし」は共通語なのでしょうか。 もしそうだとすれば、「まむし」の写真まで撮って解説するとは、バカとしか言いようがありませんね。
辞書には
『ぶと⇒ぶゆ(蚋)』と書いてあって、ぶゆを見ると 『双翅目ブユ科に属する昆虫の総称。体長一〜四ミリメートルぐらい。体形はハエに似ているが、きわめて小さい。体は黒色、灰色などで、はねは透明。人畜に群がって吸血し、不快感を与え、フィラリアなどの病原体も媒介する。アシマダラブユ、ウマブユなど種類が多い。ぶよ。ぶと。《季・夏》 国語大辞典(新装版)小学館 1988』 と載っています。 関西・九州では「ぶと」といい、関東では「ぶよ」といいますが、正しくは「ぶゆ」です。 【例】 「ぶとに噛まれた(ぶゆに刺された)」 もちろんブユに歯はありませんが、関西では蚊やブユに刺されることを、噛まれるまたは食われるといいます。 ブユは人の皮膚を傷つけて流れ出る血液をなめるので、蚊とちがってブユの場合は関西の噛まれるという表現のほうが正しいような気がします。 ブユの卵は、はやい流れの中の岩にうみつけられ幼虫は流水の中で成長するので、蚊と違って水の汚い都会には住んでいません。 私の住んでいる相模湖町では、夏場に半袖で畑に行くと間違いなくこいつに刺されてしまいます。 人にもよるのでしょうが、私の場合はブユに刺されると、蚊に刺されたときの百倍ぐらい痒くなり、腫れあがってしまいます。
辞書には
『め【海布・海藻】 (「め(芽)」の意とも、「も(藻)」の変化ともいう)若布(わかめ)、海松布(みるめ)、荒布(あらめ)など食用となる海藻の総称。 国語大辞典(新装版)小学館 1988』 と載っています。 ひじきに似た海草の一種で、ワカメ・アラメなどの「メ」が長音化したものです。 【例】 「このメェ、おいしいなぁ。」 リンクをはらしてもらっているI & My Daches ラミエル's Home Page!の中の消え行く言葉で見て、この言葉を思い出しました。 海草が好きな子どもなど普通はいないので、「めぇ」が美味しかったという記憶はないのですが、「めぇ」という単語は覚えていました。 芽や目(めぇ)は「ぇ」にアクセントが来て言葉の最後が上がりますが、こちら海草の「めぇ」はアクセントが「め」にあって言葉の最後が下がります。
辞書に『ちんこのまじない』は載っていません。
『ちんこのまじない』とは東京弁でいうところの『ちちんぷいぷい』のことなのです。 『ちちんぷいぷい』は辞書にも載っています。 『「ちちんぷいぷい御世の御宝」の略。 晢御世(ごよ)の御宝(おたから・おんたから) 幼児が転んだり、ぶつけたりして体を痛めた時に、痛む所をさすりながら、すかしなだめること。また、そのときに唱えることば。一説に、智仁武勇は御世の御宝の意とも。 国語大辞典(新装版)小学館 1988』 と載っています。 『ちんこのまじない』とはまったく『ちちんぷいぷい』とおなじように使われる言葉です。 『ちんころまじない』とも言います。 【例】 「おぉよしよし。ちんこのまじない、ちんこのまじない。もう痛たないやろ。」 この『ちんこのまじない』のいわれは、鎮宅霊神という中国の神から来ているそうです。 家を新築して移転するときに、居住安全や厄除けのために鎮宅霊符という護符をその神様から受けたのだそうで、その鎮宅がチンコとなって、護符を受けるかわりにその名をとなえて指で撫でたのだそうです。 (大阪ことば事典 講談社学術文庫より) 鎮宅がなぜ「チンコ」になったのかは謎ですが、そう書いてあるのだからそうなのでしょう。
辞書には
『(副詞「さらに(更)」からの変化) T (形動)手の加わっていないさま。未使用であたらしいさま。また、そのもの。「さらの浴衣(下駄)」*浮・元禄大平記‐五「さらの凡夫にはまさり候べし」 U 〔接頭〕名詞の上につけて、そのものが新しいことを現す。「さら世帯」「さら袴」「さら湯」「さらギセル」など。 国語大辞典(新装版)小学館 1988』 と載っています。 新しいこと。新規。新品のことです。 強めて言うときには「さらっぴん」とも言います。 アクセントは「ら」にきます。正確に言うと、音節内に「さがりめ」のある言葉( 拍内降下という。 感染 第0期参照 )です。 【例】 おっ。さらっぴんの万札やん。 この言葉も、関西人は共通語だと思ってしまいますが、東京で聞くことはまずありませんし、大阪ことば事典にも載っていますので、関西の言葉なのでしょう。 真新しいという意味で「まっさら」とも言います。 「さら」の反対は「ふる」です。 「ふる」の場合、「お」をつけて「おふる」といえば共通語として通じます。
辞書には
『T 〔自ラ四〕(「へたへた」の「へた」の動詞化か) 1 へこたれる。へたばる。よわる。また、疲れて倒れる。*浄・双蝶蝶曲輪日記‐五「へたりをらうと持自慢」 2 尻をつけてすわる。尻餅をつく。*浄・沁R姫捨松‐二「尻居にどうどへたりながらに切結ぶ」 U 〔他ラ四〕借金を返さないままにする。倒す。*滑・大師めぐり‐上「そちが借金へたらうとおもふて」 国語大辞典(新装版)小学館 1988』 と載っています。 すわりこむとかへたばるとか弱るという意味で使うのが一般的でしょうか。 【例】 この電池へたっとんちゃうか。(この電池弱っているのではないか) 「大阪ことば事典」(講談社学術文庫)の「へたる」の項には『へたばる・すらり込む。また、弱る。「全国方言辞典」ヘタルの項に「(1)疲れはてる。神戸。(2)坐る。臀をつけて坐る。奈良・香川・京都・大阪・神戸・岡山・広島。(3)倒れる。福井県遠敷郡・滋賀県蒲生郡・三重県阿山郡・奈良・大阪府泉北郡・香川』と載っていました。 疲れはてるという意味で「へたる」を使うのは神戸だけなのでしょうか。 最近あまり神戸に帰っていませんのでよくわかりませんが、疲れはてるにしろ坐り込むにしろ、多分今では「へたる」という言葉自体あまり使われなくなっていると思います
辞書に『はなつん』は載っていませんでしたが、『はなつんぼ(鼻聾)』で載っていました。
『はなつんぼ 鼻かぜなどのために、においを感じないこと。鼻のきかないこと。また、その人。 国語大辞典(新装版)小学館 1988』 「はなつん」は「はなつんぼ」の略です。 アクセントは「つ」に来ます。 【例】 風邪ひいてはなつんになってもた。 ネタになるような言葉はないかと思って「大阪ことば事典」(講談社学術文庫)をめくっていて「はなつん」が目にとまりました。 私は花粉症なので春先は「はなつん」になるのに、どうしたわけかこの「はなつん」という言葉をすっかり忘れていました。 今は花粉の心配もなくなり、また犬のように鋭い嗅覚がもどってきましたので、来年の春まで「はなつん」には縁がなくなります。 |