東京弁は感染るんです
関西弁の「来る」の否定形にはバリエーションが多く、京都は「きーひん」、大阪は「けーへん」、神戸は「こーへん」というらしいが、神戸出身の私は「こーへん」とは言わず「けーへん」という、と以前「今日の症状」に書いた。 なぜ私は神戸出身なのに「こーへん」と言わないのか、先日、図書館で見つけた国立国語研究所が刊行している『ことばの地域差―方言は今』 という小冊子にその答えが書いてあった。 「こーへん」は神戸や阪神間の若者層に見られ、親世代は「けーへん」が一般的なのだそうだ。 グロットグラムという横軸を地域、縦軸を年齢で表した方言地図によると、神戸市の10代〜20代は「こーへん」、40代〜60代は「けーへん」と言い、さらに上の世代では「きえへん」と言うらしい。 明後日から数日間、神戸の甥っ子(20歳)が遊びに来るのだが、本当に「こーへん」というのかどうか観察してみようと思う。 ちなみに、「こーへん」は共通語の「来ない」と「けーへん」が混ざり合って誕生した新しい方言なのだそうだ。 お求めは政府刊行物サービス・センターで、と書いてあるがどこにあるのか知らない。
関東には西浦和、東浦和、北浦和、南浦和のように頭に東西南北がついている駅名が多いが(浦和にはこのほかに中浦和と武蔵浦和と何もつかない浦和がある)、関西には、西宮北口(阪急)、西宮東口(阪神の西宮市内立体交差完成に伴い2001年に廃止されてしまったが)、宝塚南口(阪急)、鈴蘭台西口(神戸電鉄)、アイランド北口(神戸新交通)、公園東口(大阪高速鉄道)、桃山南口(京阪)、八木西口(近鉄)のように「〜口」と名のつく駅が多い。 神戸電鉄の鈴蘭台西口にはさらに西方に西鈴蘭台という駅もあるのでややこしい。 東西南北だけではなく、関西には甲子園口(JR)、川西能勢口(阪急・能勢電鉄)、丹波口(JR)のように「〜口」のつく駅名が多い。 辞書には、『口が多い:よくしゃべるさまである。また、おしゃべりな性質である(国語大辞典(新装版)小学館 1988)』と書いてあるが、関東に比べると、やはり関西の方が口が多い!? バスの場合、何々駅北口、南口というのは関西でも関東でもごく普通。
『違反された場合は・・・処罰されます』 「〜られる」という言葉は、受け身・可能・自発・尊敬をあらわす助動詞である。 下の写真にある「処罰される」は受け身だと思うが、最初の「違反された」は尊敬なのだろうか。 ネットの辞書で「られ る」をひいてみると、例えば「こうしょっちゅう金を借りに来〈られ〉ては困ってしまう」と言う場合のように、動作・作用の主 体に害が及ぶものは迷惑の受け身と呼ばれるらしいが、『違反された場合は・・・処罰されます』では「処罰される」が受け身で、主体は違反した本人なのでこの場合は迷惑の受け身ではなくやはり尊敬表現だと思う。 受け身であろうが尊敬であろうが別にどうでもよいことだが、少なくともゴミを捨てるヤツを尊敬する必要はないと思う。 (語学教育の書籍などで知られるアルクのサイトに日本語Q&Aというコーナーがあって、その中に 『関西方言にも「れる/られる」は存在しますが、これは「受け身」や「可能」などには使え ても「尊敬」は表しません。』と書いてあった。 関西弁には「〜はる」という簡易尊敬表現があるから、関西弁の「〜られる」は尊敬をあらわさないということらしいが、そんなこと はないと思う。 京都では「泥棒が入らはった」「猫が通らはった」のように「〜はる」が尊敬を表さない場合もあるので、京都弁でなら尊敬を表さずに『違反しはったら・・・処罰されます』と言うことができる。) 何度も言うようだが、子どもでもわかることを大人にわからせるのは難しい。
2002年5月の「今日の症状」で、一度見ただけでは何のことかよくわからない空き缶の投げ捨て防止を呼びかける看板について書いたが、その看板の写真を撮ってきたのでもう一度写真入りで紹介する。 最初これを見たとき「あ」と「缶」の間に何か別の文字が書いてあって、いたずらされて消されてしまったのだとばかり思っていた。 大阪ことば事典によれば、「イカン」と「アカン」はほとんど同義語であるが、文字で書きあらわせないニュアンスの差があると書いてある。「イカン」は他動的で「アカン」は自動的なのだそうだ。 そうだとすれば「なげすて いかん」で禁止事項を伝え、「すてたら あかん」で良心に訴えるという二段構えの高度なテクニックが使われているのかもしれない。 (でも、その前にシャレが通じないと意味がないが。。。) 子どもでもわかることを大人にわからせるのは難しい。 |